私の俳句
Yokoyama's Japanese Poets
ー春ー
不在票あり送り主の名「早春賦」
行李から母の手紙や水温む
独活苦し選ばざるけり道もまた
Beef or Chicken?眼下の谷は春深し
納戸奥母と納めた雛、発見!
花吹雪四方に追って犬と吾と
白柴はぴょんぴょんと行く春近し
赤柴は初めての春跳び跳ねる
ツバメ飛ぶ競い追う子の笑い声
愛犬「ハル」傍目も呉れず春の朝
地下水の音は密やか初山葵
春眠を揺り起こさんと亡き母は
廃村の春を待つポストは独り
駿河湾波音消さん茶摘唄
黙食の宴桜の飾花
地雷原遠い国にも春訪う
上空をミサイル飛んで山笑う
「友情」の盾は春発ちし部屋残しおり
色褪せしビスクドールは母の青春
色違う地図の国にも同じ春
ー夏ー
麦酒の汗今日の仕事に感謝せり
大仏めく雲が地平に座して夏
時計台家路を指して夏夕焼
蝉穿つ七年の土生も死も
Live Free, or Die 是とす老いの夏
風鈴が無言決め込む溽暑かな(季重なり)
里帰り黴くさき蚊帳風に干す(季重なり)
働蟻木陰を選ぶ炎暑かな(季重なり)
小さき吾は雨逃ぐる蟻「地の塩」や
歩成して指先に汗手誤る
日焼子にコパトーン塗る午後三時
蝉時雨川の喧騒静やかき
大木を倒さん夏の樵なり
群青という色ありけふの夏空や
国境の異国に見ゆる同じ夏
犬愚図るホットプレート夏の道
万国旗トリコロールの空に虹 2024/07/27
夏盛り辻の先にも海鼠壁
日に2本バス時刻表夏を堪え
擦れ違う子等ニキビ面汗に汗
旱坂恨しく見ん万歩計
夏の旅尻に突っ込むフォークナー
涼を呼ぶ術も無かりし布袋草
賞味期限匂いを嗅いで決める夏
水遣りの虹潜らんと蜆蝶
青春のしょっぱき汗の乾く塩
更に汗銭湯の湯は45℃
宿題は「葉脈を見る」夏休み
空腹に傷みしバナナ貪りぬ
噺家の抜襟匂ふ夏の宵
犬走猫がおやすみ熱帯夜
打水に泰然自若猫ひとり
土に帰す蝉の骸や飛び立てり
夏草が踏み荒らされたるドッグラン
コンマ1タッチの残酷夏プール(季重なり)
夕涼み母の団扇が風運ぶ
宙に浮く葉っぱのマジック蜘蛛の糸
家籠出涸らし珈琲飲む真夏
炎風め見えざる敵にタックルせん
ー秋ー
まだ叱る母が瞼に住みて秋
茜空吾も蜻蛉の群れの一
秋晴やひと風、木々の歌を聴く
嗚呼、美味し白米、御付、秋の風
新盆の「My Father's Eyes」の歌
けんけんで蜻蛉を追わん隅田川
友逝きし秋胸に沁む小椋佳
蜉蝣は犬の鼻先舞う命
夕の道左右も見ずに鹿悠悠
テレビでは戦火珈琲の秋日和
跪き祈る人見る原爆碑
逢魔時背をぞくりとす鹿の声
裏庭の鹿行き場なく崖険し
台風の針路来るなよ広袴
ー冬ー
東京の窓絵画と為りし冬銀河
悴む手肉まんの湯気オリオンへ
月の弧やスケートリンクに映りおり
終幕と思しき楽日冬近し
蝋梅も新芽は緑吾もまた
禁じられた遊び焚火の焼芋や(季重なり)
枯葉敷く朽ちたベンチで読む文庫
ー無季ー(気分は)
子の吾等が5センチごとのせいくらべ(春)
真一文字ヒコーキ雲の擦れおり(秋)
白球抜けるチクロの甘味水薬鑵(夏)
野良猫の昼寝許さぬボンネット(夏)
直球を今投げ込まん甲子園(夏)
犬球を擦れば母の乳のごと
休戦を願う万人“No”独り
ブレイキン皆笑顔なら世は平和
仏壇の下がりのお茶でティータイム